女性の心臓病は、なぜ男性と違うのか?


女性の心臓病は、男性の心臓病とは異なります

家族リスク要因は、男女ともに共通して影響を受けるリスクです。しかし、心臓病になると、女性と男性の間に大きな違いがあり、症状の出方、治療の方法にも違いが出てきます。これらの違いを確認してみましょう。


女性の心臓病は、男性の心臓病とは異なります

まず、心臓発作の症状が異なります。心臓発作の発症の仕方が、男女で大きく異なることが多いのです。男性では一般的に 、体の左側(胸や腕)に局所性の、非常に激しい痛みを発します。これに対し女性では、疲労やめまい、息切れ、または吐き気などの症状が現れます。痛みは、首か顎、もしくは両腕か片腕に現れます。この症状は、インフルエンザと類似しているため、誤診されてしまうことも多くあります。女性の場合一般的に、70代になって初めて心臓発作を経験することが多いのですが、それがそのまま致命的な発作となってしまうこともしばしばあります。これは、初期の兆候が誤解されてしまったか、無視されてしまった為に起こる悲劇です。最初の心臓発作の発症から、1年以内に無くなる確率も、女性が男性を上回っています。

女性と男性で大きく異なる、心臓の診断結果

冠動脈疾患におけるもう一つの違いは、ストレステスト(室内エクササイズ用自転車などでの運動時の、心臓の電気的活動を記録するテスト)の結果が、女性の場合、しばしば「偽陽性」となって現れてくることです。このテストは有益な診断ツールではありますが、偽陽性が出るパーセンテージが、閉経前の女性で特に高くなります。つまり、このテストによって、心臓疾患を持たない女性が、冠動脈疾患であると誤診されることもあるのです。

虚血性心疾患でも異なる、女性の症状

虚血性心疾患とは、冠動脈疾患の医学用語です。虚血性心疾患自体は治療可能な疾患ですが、なんの症状も起こさない「サイレント」状態で存在することが多く、それは特に女性の場合で顕著な傾向にあります。治療が可能であるにも関わらず、「サイレント」状態での進行の為、本人を含め誰にも気づかれずに病状が進行し、心臓発作や不整脈(心臓の異常な電気的活動)による突然死を迎えてしまうこともしばしば起こります。最近の画期的研究によれば、女性の心臓病疾患は、男性のそれとは大きく異なり、様々な複合的要素が重なったものなのです。女性の虚血性心疾患は、男性疾患に基づいた従来の診断手法による検出が通用せず、症状が危機的状況に進むまで、診断未確定のまま存在し続ける可能性があります。年配の女性には、特に虚血性心疾患の危険性があることを示した調査結果として、松澤泰史医師と彼の同僚による、虚血性心疾患の存在が予測可能かを調査した、140人の 女性へのEndoPAT®検査の結果を紹介しましょう。

虚血性心疾患でも異なる、女性の症状


この研究は2010 年、米国心臓病学会誌 (Journal of the American College of Cardiology) に発表されました。松澤医師によると、小さな胸の痛みはあるものの、他の症状はない、安定的な 140人 の女性にEndoPAT®検査を試みたところ、後に、非閉塞性冠動脈疾患か閉塞性冠動脈疾患と診断された女性たちでは、EndoScore™は著しく低い値を示していました。これはすなわち、大きな胸の痛みを伴わない冠動脈性心臓病患者を、この段階で特定することが可能である、ということです。EndoPAT® 検査は、虚血性心疾患の存在を確実に予測可能な検査なのです。女性の死の原因の第1位が冠動脈疾患であることを考えると、45歳以上の女性は、今すぐ主治医にEndoPAT®検査を申し込むべきであると、この研究は示唆しています。






低ホルモンレベルにある更年期の女性では、心臓発作のリスクが上昇します

エストロゲンホルモンは、女性の心臓を保護する役割を担っています。しかし更年期を迎え、エストロゲンが減少すると、低密度リポタンパクコレステロール (LDL、「悪玉」コレステロール) 値が上昇し、高密度リポタンパクコレステロール (HDL、「善玉」コレステロール) 値が低下し始めます。また、閉経後の女性の総コレステロールの値は、同じ年齢の男性に比べ、高いレベルにあります。トリグリセリドの非健康的な増加と組み合わされることで、65 歳以上の閉経後の女性においては、心臓病による死亡の危険性が、平均よりも大きくなるのです。しかし、ホルモン補充療法 (HRT) は、少々物議を醸す問題となっています。HRTとは、主に更年期障害の症状を緩和するための治療として、若しくは骨粗鬆症による骨の弱体化を防ぐセカンドラインの薬として使われてきましたが、加えて、心臓病から女性を守る治療とも考えられてきました。しかし現在HRTは、その影響を受けやすい小グループに於いては、心臓発作発症を増加させる要因であると受け取られているのです。全米心臓協会は、心臓病のリスク低下を目指す閉経後の女性に対し、HRTの推奨を中止しました。更年期を迎え、エストロゲン ホルモンが低レベルにある女性たちは、今や心臓病と骨粗鬆症の両方の危険にさらされてしまっているのです。この医療ジレンマに対する明快な解決策は、現在のところ、まだ見つかっていません。では、どうすればいいのでしょうか?EndoPAT®検査を含む、包括的心血管リスク軽減プランによる早期治療を行うことで、心血管疾患を予防し、その進行を停止することが可能です。