血管内皮討論会
血管内皮細胞と心血管全体の健康マーカーとしての役割
ピーター・ガンツ医学博士
サンフランシスコ総合病院循環器科主任教授。 ガンツ博士は、血管トランスレーショナルリサーチの分野で活躍しており、彼の研究は、血管内皮機能を含む動脈硬化の様々な側面に焦点を当てています。彼の研究室は、冠状動脈と末梢血管における内皮機能検査の方法論的アプローチの先駆的な研究で有名です。(Ludmer PL, Selwyn AP, Shook TL, Wayne RR, Mudge GH, Alexander RW, Ganz P. Paradoxical vasoconstriction induced by acetylcholine in atherosclerotic arteries. N Engl J Med. 1986;315:1046-1051). この研究は、生物病理学分野において、一酸化窒素とエンドセリン-1が果たす役割に関し、一層の理解を深めることになりました。 また、ガンツ博士の研究は、血管や全身の炎症と動脈硬化性プラークの脆弱性の理解に大きな貢献を果たしています。(In 1998, Drs. Furchgott, Ignarro, and Murad received the Nobel Prize for their discovery of the role of nitric oxide in cardiovascular regulation).
アミール・ラーマン医学博士
メイヨークリニック内科主任教授。 アミール・ラーマン博士は、キャリアを通じて心血管研究の分野で活躍してきました。彼の主要な興味は、先天性心疾患、冠動脈生理学、冠動脈イメージング、および心不全の研究にあります。彼の研究の多くは、心血管トーンを変調させる要因として、エンドセリンと窒素酸化物の役割に重点が置かれ、心血管疾患における血管内皮の役割を明らかにしてきました。
2004年、Journal of the American College of Cardiologyに掲載された非常に先駆的な彼の研究は、非侵襲的検査手法であるEndoPAT®が、血管内皮機能障害と冠動脈疾患の診断に有効な診断ツールであることを証明した研究でもあります。(Bonetti PO, Pumper GM, Higano ST, Holmes DR Jr, Kuvin JT, Lerman A.) Noninvasive identification of patients with early coronary atherosclerosis by assessment of digital reactive hyperemia. J Am Coll Cardiol. 2004 Dec 7;44(11):2137-41)
ジョセフ・ヴィータ医学博士
ボストン大学医学部教授。 ジョセフ・ヴィータ博士は、ボストン大学医学部心血管医学セクションにおける上級心臓医スタッフを務めています。ヴィータ博士は長年にわたり、フラミンガム心臓研究における世代間比較研究など、様々な重要な研究に携わってきました。アメリカ国立衛生研究所(NIH) とアメリカ心臓協会(AHA)で数多くの研究を主管しており、AHAにおける心血管病態生理研究セクションの前議長でもあります。
心臓疾患の謎
医師たちは、ストレスがどのように心臓疾患に影響を及ぼしているのか、完全には理解していません。しかし、幾つかのポイントはあります。例えば、ストレス・ホルモンが大量に分泌されると、冠動脈に痙攣を引き起こします。血液を心臓に供給する動脈の壁にある血管内皮細胞に影響し、血管の狭小化につながる可能性もあります。また、エピネフリン・ホルモン (アドレナリンとして知られています) は心臓の細胞に直接付着し、細胞内に大量のカルシウムを注入、一時的に機能不全に陥らせてしまいます。 ジョンズ ・ ホプキンス大学で実施され、ニュー イングランド医学ジャーナルにて公表された、ストレス心筋症にある 19人のたこつぼ型心筋症患者の研究では、全ての患者が、その入院の12時間以内に、家族の死、自動車事故、公衆の面前でのスピーチによる恐怖、怒りに満ちた言い合いなどの深刻な感情的ストレスを受けていたことが判明しました。これは、サプライズパーティーの例さえ含んでいます。一人を除き全て女性で、中年かそれ以上の年齢でもありました。テストの結果、通常心臓発作の後に見られる閉塞や冠動脈血栓もしくは心臓損傷などは発見されませんでした。しかし、彼らはすべて心臓に問題を持っていました。 左心室、心臓の主ポンプ室が十分な血液を供給できないでいたのです。いくつかのケースでは、生命を脅かす、心拍リズムの異常と心不全につながる危険がありました。加えて、19人すべての患者の血中から、通常のアドレナリンの7〜34倍に当たるストレス・ホルモンが検出されたのです。なぜ、年配の女性は、こういったストレス性心筋症に陥りがちなのでしょうか。何人かの心臓専門医は、エピネフリン・ホルモンのようなストレス性のホルモンから心臓の細胞を守るためには、エストロゲンの供給が必要だからではないかと疑っています。女性は、年をとるにつれて、エストロゲンのレベルは減少していきます。そのため、大量のストレス・ホルモンが分泌されると、心臓に大きな負担となって現れてしまうのです。
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